3月13日 (木)に開催しました公開講座『令和6年度公開講座「動物のお医者さんになるためには」自然を守る獣医編 ~野生動物や環境も診る獣医~』の当日の動画を以下のURLのとおり掲載いたしましたので、お知らせいたします。
https://youtu.be/lfUSaZc0PKI (岩手大学公式Youtubeチャンネル)
年: 2025年
岩手大学大学院獣医学研究科の古市達哉教授らは、名城大学、酪農学園大学、立命館大学、国立国際医療研究センターと共同で、CANT1遺伝子が働かなくなったマウスの腱では形態と糖鎖の合成に異常が起きていることを明らかにしました。腱は骨と筋肉をつなぎ留める役割を果たしており、腱の異常は関節脱臼の原因となります。つまり、CANT1の機能異常は腱を脆弱化させて脱臼を誘発する可能性が示されました。CANT1が産生を調節している糖鎖の補充は、遺伝性脱臼の予防につながることが期待されます。
この研究成果は、岩手大学大学院獣医学研究科の山下莉奈大学院生を筆頭著者とする論文として、スイスの国際学術誌「International Journal of Molecular Sciences」オンライン版に、3月10日に公開されました。
詳しくは、下記のページをご覧ください。
https://www.iwate-u.ac.jp/cat-research/2025/03/006646.html (岩手大学ウェブサイト)
令和7年4月に獣医学部を新設するにあたり、ホームページを開設いたしました。
本学部の特色ある学びや教育方針、カリキュラムの詳細を、ぜひホームページにてご確認ください。
体中にあるセンサー
体は内外で生じる変化(刺激)を感知することで、その刺激に適した反応を示します。そのためには、刺激を感知する感覚受容器が必須です。感覚受容器も刺激を検出しやすい形をしています。様々な感覚受容器の刺激受容機構を明らかにするために、その構造と機能を研究しています。
血中酸素濃度センサーと血圧センサー
動物は呼吸によって酸素を取り込み、血中の酸素を全身に送ることで活動しています。環境変化や呼吸器疾患によって低酸素状態になると、頸動脈小体が血中酸素濃度の低下を検出します。その情報をもとに、呼吸数を増やして酸素をより多く取り込み、強く血液を送り出す結果、血圧が上がります。血圧が急激に高まると血管が障害されてしまいますが、頸動脈洞や大動脈弓に存在する圧受容器が高血圧を感知することで、心臓の働きが抑えられて血圧は元に戻されます。低酸素状態の身体活動を支える頸動脈小体の受容機能は様々な神経伝達物質によって調節され、頸動脈洞の圧受容器は血圧変化を感知しやすい形をしていることが分かりました。
味覚センサーと胃の運動センサー
食べ物に含まれる味は、味蕾(みらい、図1)という味覚受容器によって感知されます。味蕾は主に舌に存在しますが、ラットでは上顎の前歯のすぐ後ろにある切歯乳頭にも味蕾が密集していました。切歯乳頭の味蕾は口腔の最も先端にあるので、食べ物の味をいち早く検出しているのかもしれません。
飲み込んだ食べ物は胃にたまり、胃壁の運動によってすりつぶされます。胃の運動は、胃壁にある感覚神経終末によって感知され、調節されています。胃壁の運動が最も大きい領域に、新たな形をした感覚神経終末を見つけました(図2)。この神経終末は、胃壁の運動を感知しやすいようにクモの巣状の構造をしている可能性があります。

図1. 共焦点レーザー顕微鏡で撮影した味蕾の断面像(A,B)と味細胞の立体再構築像(C)

図2. 共焦点レーザー顕微鏡で撮影した胃の感覚神経終末

共同獣医学科 獣医解剖学研究室
准教授 横山拓矢
KEYWORD:感覚受容器、神経終末、神経伝達物質、組織学
ひとこと
興味の有無に関わらず、色々なことを考え、試してみてください。面白いことに、思わぬところで成果や興味が生まれることがあります。
肝蛭とは?
肝蛭(かんてつ)(図1)は牛などの反芻家畜の肝臓に寄生する吸虫です。肝障害により家畜の増体率や乳量が著しく低下するため、食料の生産効率に甚大な悪影響を与えています。その被害額は年間32億ドルを超えると推計されています。また、水耕野菜や感染動物の生レバー等の食品に付着した幼虫の摂食により、人に感染する人獣共通感染症でもあり、世界中で240万人が感染し、1億8000万人に感染リスクがあると見積もられています。

図1.肝蛭(成虫)
日本の現状は?
肝蛭はシカなどの野生動物にも寄生します。北海道では、エゾシカの個体数が年々増加しており、肝蛭症の増加が危惧されていました。そこで、血清を用いたELISAによる大規模疫学調査を実施したところ、エゾシカの肝蛭抗体の陽性率は全道で平均45%、深刻な市町村では80~90%にも達することが明らかになりました。北海道ではエゾシカからヒトヘの感染と、エゾシカから家畜ウシへの伝播の両面で肝蛭症のリスクが極めて高いと考えられるため、早急な対策が必要です。
制御するためには?
近年、薬剤耐性肝蛭が世界各地で出現し、深刻な状況です。また、国内では既存薬が使用できなくなった問題もあることから、新規薬剤の開発が強く求められています。
肝蛭症を制御する新しい薬剤には、感染予防効果となる「幼虫に効くこと」と、治療効果となる「肝臓に寄生している成虫に効くこと」の両方が必要です。実験室で継代している肝蛭を用いて(図2)、この両方を実現できる新規薬剤の開発を目指しています。

図2.肝蛭の幼虫に対する候補薬剤の効果

共同獣医学科 獣医寄生虫学研究室
准教授 関 まどか
KEYWORD:寄生虫、血清診断、薬剤耐性、新規薬剤開発
ひとこと
真剣に取り組めば必ず結果はついてきます!
日時:令和7年 3月7日(金)14時-16時50分
場所:農学部5号館 ぽらんホール
- 一條俊浩教授(産業動物内科学)最終講義(14時〜15時20分)
演題名「始まりと終わり」 - 落合謙爾教授(獣医病理学)最終講義(15時30分〜16時50分)
演題名「獣医病理を専門にして ー巡り会いに感謝ー」
子犬が他の子犬や飼い主以外の人と出会い、家庭以外の環境にふれることは、社会性を身につけさせ、問題行動を予防する上でもとても大切です。
岩手大学動物病院のパピークラス(子犬のしつけ教室)では、無理せず、少しずつ新しいことに慣れさせる方法を練習します。
2024年度のパピークラス第4クールを、2025年1月25日~2月22日に開催します(期間中の毎週土曜日に開催)。
詳しくは、岩手大学動物病院HPをご覧ください。
http://news7a1.atm.iwate-u.ac.jp/~hospital/event/puppyclass.html