体中にあるセンサー
体は内外で生じる変化(刺激)を感知することで、その刺激に適した反応を示します。そのためには、刺激を感知する感覚受容器が必須です。感覚受容器も刺激を検出しやすい形をしています。様々な感覚受容器の刺激受容機構を明らかにするために、その構造と機能を研究しています。
血中酸素濃度センサーと血圧センサー
動物は呼吸によって酸素を取り込み、血中の酸素を全身に送ることで活動しています。環境変化や呼吸器疾患によって低酸素状態になると、頸動脈小体が血中酸素濃度の低下を検出します。その情報をもとに、呼吸数を増やして酸素をより多く取り込み、強く血液を送り出す結果、血圧が上がります。血圧が急激に高まると血管が障害されてしまいますが、頸動脈洞や大動脈弓に存在する圧受容器が高血圧を感知することで、心臓の働きが抑えられて血圧は元に戻されます。低酸素状態の身体活動を支える頸動脈小体の受容機能は様々な神経伝達物質によって調節され、頸動脈洞の圧受容器は血圧変化を感知しやすい形をしていることが分かりました。
味覚センサーと胃の運動センサー
食べ物に含まれる味は、味蕾(みらい、図1)という味覚受容器によって感知されます。味蕾は主に舌に存在しますが、ラットでは上顎の前歯のすぐ後ろにある切歯乳頭にも味蕾が密集していました。切歯乳頭の味蕾は口腔の最も先端にあるので、食べ物の味をいち早く検出しているのかもしれません。
飲み込んだ食べ物は胃にたまり、胃壁の運動によってすりつぶされます。胃の運動は、胃壁にある感覚神経終末によって感知され、調節されています。胃壁の運動が最も大きい領域に、新たな形をした感覚神経終末を見つけました(図2)。この神経終末は、胃壁の運動を感知しやすいようにクモの巣状の構造をしている可能性があります。

図1. 共焦点レーザー顕微鏡で撮影した味蕾の断面像(A,B)と味細胞の立体再構築像(C)

図2. 共焦点レーザー顕微鏡で撮影した胃の感覚神経終末

共同獣医学科 獣医解剖学研究室
准教授 横山拓矢
KEYWORD:感覚受容器、神経終末、神経伝達物質、組織学
ひとこと
興味の有無に関わらず、色々なことを考え、試してみてください。面白いことに、思わぬところで成果や興味が生まれることがあります。